魔女きにろのひとりごと一覧

別れ・・・

うさ太はゆっくりだったけど確実にお仕事を覚えていきました
かあちゃんは今までのようにうさ太と公園に行くことを続けそれはかあちゃんにとって幸せでありながらも毎朝二人分のお仕事を確認するまではドキドキ不安でした
うさ太はなにも知らずかちゃんとお仕事ができるのがうれしくて張り切っていました

その日・・・別れの日はやってきたのです 朝ドアの外にはお仕事の箱は一つしかなかったのです
かあちゃんはそれを見ると目の前が真っ暗になったようにふらふらと倒れそうになりました
ああ今晩はうさ太とのお別れの日・・・かあちゃんの一番恐れていた日です
でも逃れられないことです かあちゃんは覚悟を決めました

いつものようにおもちを食べミルクを飲みうさ太のつくった朝食を食べ掃除洗濯をすませると「うさ太今日はバスに乗ってお買い物にいこうね」といいました
うさ太は大喜びです
バスでお買い物に行くとドーナツを買っておやつにするからです 大好きなドーナツです
かあちゃんはうさ太にかあちゃんと同じ白い長靴と白いエプロンを買いました うさ太は大喜びで「わ~いかあちゃんとおそろいだよ~」ピョンピョンはねました
それから「お昼も食べていこうね」かあちゃんは「何を食べようかしらね」とうさ太に聞きました
「かあちゃんは何がたべたいの?」「そうね~何がいいかしらね~」かあちゃんはいつもならうさ太の好きなものにするのに今日はちょっと違っていました
うさ太はかあちゃんを見つめました
「かあちゃんはエビフライを食べてみたいけど・・・」
「わ~いエビフライおらは大好きだよ」
「あらら・・・じゃそうしましょうね」かあちゃんはうれしそうにニコニコしました うさ太はかあちゃんの笑顔を見てうれしくなりました だって最近はかあちゃんはちょっと悲しそうに見えていたからです
エビフライを食べドーナツを買って家にもどるとうさ太はお仕事をしようとして「アレレ・・・お仕事の箱が一個しかないよ」と言うとかあちゃんは悲しい顔で「今日からうさ太一人でお仕事をしなければいけないのよ」答えました
「そうなのか~~よーしおらがんばってお仕事するからね、かあちゃん安心してよ」
うさ太はお仕事を張り切って始めました
三時にはかあちゃんがドーナツを用意してくれ夕飯はカレーライスをつくってくれました
「おらかあちゃんのカレーが大好きだよ おらも同じようにつくるんだけど・・・なんかちょっとちがうんだよね」夕飯が終わるとまたお仕事をしようと・・・
「かあちゃん!!」うさ太は叫びました
かあちゃんの姿がユラユラしているのです
「うさ太・・・ごめんね、ごめんね」
「どうしたのかあちゃん なんかへんだよ」
かあちゃんはゆれるからだを必死に止めながら「うさ太ほんとにごめんなさい、かあちゃんはお月様に帰らなければならないの」
「エッお月様に・・・おらも行くよ行くよ」
「うさ太はまだ行けないのよ」
「え~~~・・・かあちゃんいつ帰ってくるの?明日?明後日?」
「もう帰ってこれないの・・・でもお月様でうさ太を待ってるからね必ずまた合えるから」
「やだよーやだよーおらも一緒にいくよ~~おらひとりぼっちになっちゃうもんやだよー」
うさ太は叫びました
でもかあちゃんはもうユラユラを止められなくてフワフワと窓から煙のように流れて行きました
空には真ん丸な・・・いつもより真ん丸な月が輝いていました
「かあちゃん!!かあちゃ~~~んエーンエーンかあちゃ~~~~~ん」うさ太は泣き叫びました
かあちゃんは白い煙になりユラユラとやがたスピードをあげ月にむかって行きました
やがて月に白い雲がかかり月は雲を飲み込むように少しゆれました
月はまた煌々と光輝きました
うさ太は泣き続けました「かあちゃんかあちゃん」呼んでも呼んでももうやさしいかあちゃんの声は聞こえませんでした
うさ太は…ひとりぼっちになってしまったのです
可愛そうにひとりぼっちに・・・


魔女は・・・

魔女は最近のかあちゃんの様子が気になってしかたありませんでした

それにかあちゃんが時々フワフワとゆれることも不思議に思っていました

水晶玉から目がはなせないしうっかり居眠りもできないのです

 

あの・・・問題の日も水晶玉をのぞいていました

楽しそうに買い物をしたり食事をする姿を見たりおいしそうなカレーを仲良く食べる様子を見て・・・ああ、なにも心配することはないんだな よかった、よかった・・・

魔女は暗くなりはじめた空にほうきにのって飛び立ちました

魔女のお仕事ですね

だからそのあとに起きた悲しい出来事をしらなかったのです

まあたとえそれを目撃したとしてもどうすることもできなかったのですけどね


うさ太と魔女

魔女は時々うさ太の家のそばを通って部屋をのぞくことがあった

この日もそうしょうとうさ太の家のほうに向かった

そのとき魔女の耳にうさ太の泣き叫ぶ声が聞こえてきた「かあちゃ~んかあちゃ~~~ん」魔女はスピードをあげた おんぼろなほうきはギシギシと悲鳴をあげ魔女もこんなスピードになれていなかったので落ちそうになるのを必死でこらえた

うさ太の家の窓に近づき中をのぞくとうさ太はまくらをだきしめワアワア泣いていた「かあちゃんかあちゃん」いくら呼んでもかあちゃんの姿は見えなかった

魔女はそっと家の中にはいりうさ太のそばに近づくとその気配に気が付いてうさ太が顔をあげ「かあちゃん?」でもそこにいたのが魔女だとわかると「魔女さんかあちゃんが行っちゃったよ~」とまた泣き始めた

「かあちゃんが行っちゃった?どこに?」「お月様に」

魔女は空を見上げた 月は煌々と光を放ちまるでうさ太のところにむけてひかっているかのようだった

「魔女さんおらをお月様に連れて行ってよ そのほうきはお空を飛べるんでしょ?」「飛べるといっても月まではとても無理だよ」うさ太はまた泣き始めた

「・・・やれやれ・・・奇妙なこともあるもんだ まさかかあちゃんはかぐや姫・・・なんてことはないよな まあおかしな二人とは思っていたけど」

魔女はうさ太にかあちゃんが行ってしまった経緯を詳しく聞いてみた

うさ太は泣きながらも様子を話した

「そうか・・・うさ太はまだ月には行けないということはいつかうさ太も月に行ってしまうということだね・・・(ありゃ~)」「いやだよ~今すぐお月様に行きたいよ~エ~ンエ~ン」

「そういわれてもね~わたしにはどうすることもできないし・・・そうだ!!いいことがあるよ」

うさ太は顔をあげ期待に満ちた顔で魔女を見つめた


魔女の魔法

魔女は魔法の杖をクルクル回し・・・「*+*+$#*+」

なにやら呪文のようなものを唱えました

おやおやなにか見えてきましたよ

「かあちゃん!!」うさ太が叫びとびつこうとしました

魔女はあわててうさ太を止めました「これはほんとのかあちゃんじゃないんだよ かあちゃんのカゲだからさわることはできないんだよ」

「えっ?カゲってなに?」「わたしにはほんとのかあちゃんを月から呼び戻すことはできないからね これはかあちゃんのかたちをしているだけだよ それにこれはうさ太にしか見えないんだよ だからかあちゃんに話しかけるときは心の声でなきゃだめなんだよ 心の声でかあちゃんと言ってごらん」

うさ太は心で・・・かあちゃん!!・・・と言うとかあちゃんのカゲはうさ太のほうを向き・・・なあに?・・・と言うように笑いかけました

「残念だけどかあちゃんは言葉もでないんだよ」魔女は力のない自分を恥じるかのようにうつむきました

「魔女さんありがとう おらにはかあちゃんだよ 本物じゃないけどおらうれしいよ」うさ太は涙をながしながら・・・かあちゃんかあちゃん・・・と心の声で呼びつづけました

魔女は「わたしはもう一仕事しに行くよ うさ太ももうおやすみ」というと窓からほうきに乗って出て行きました

ガタガタギシギシとおんぼろほうきは音をたてながら魔女を乗せとんでいきました

うさ太はふとんを敷くとかあちゃんのカゲに・・・もう寝ようね・・・おやすみかあちゃん・・・と言うとかあちゃんはふとんに横になりうさ太のほうに顔を向け・・・おやすみうさ太・・と言ってるようにうなずきました

うさ太は触れないかあちゃんだけどかあちゃんの手のあるところに自分の手をおきかあちゃんを見つめつづけていましたがやがて眠りにつきました

 

魔女が仕事がおわってうさ太の部屋をのぞいたときはうさ太はぐっすり眠っていました

少し涙が目元にたまっていました

「やれやれ・・・かわいそうに・・・」消えそうな月を見上げ「月にt連れていってやれたらいいんだけどなあ」とつぶやきました


うさ太の成長

うさ太は目が覚めました いつものように日が昇る前です

「アッ」うさ太は飛び起きました あわててテーブルの上を見ると昨日し残したお仕事がはじのほうにまとめておいてありましたが箱はありませんでした

ドアをあけてみるといつものように新しいお仕事の箱とおもちの箱がおいてありました 家の中に運び込みおもちの箱はテーブルの上に置き「おもちはもう一個だね・・・かあちゃんはいないしカゲのかあちゃんは食べることができないものね」

カゲかあちゃんはいつもかあちゃんがすわっていた椅子にすわりました・・・おはようかあちゃん・・・

かあちゃんは笑顔でうなずきました

・・・ごめんねおらの分しかおもちがないんだよ・・・

・・・いいのよ・・・というようにかあちゃんはおもちをうさ太にすすめるように手をさしだしました

うさ太はおもちを食べましたがなんだかのどを通りませんでした ミルクがないせいかな~と思いながらもうさ太はおもちしかたべませんでした

うさ太はいつものように洗濯斗」そうじをし・・・かあちゃんお天気もいいし公園にいこうね・・・耳をピコピコ動かして公園にあまり人がいないことを確かめました

かあちゃんがいたときはうさ太には様子がさぐれなかったのに今日はとてもよくわかりました

黄色い長靴はもう小さかったのですがやわらかいうさ太の足はなんとかいれることができました

かあちゃんが買ってくれた白い長靴ははきませんでした

カゲのかあちゃんとは手をつなげないのは悲しかったけれど

かあちゃんはうさ太にしか見えないのだけれどそれでもかあちゃんがいるようで心が落ち着きました

パン屋さんがきたらメロンパンがほしいなと思ったけれどあきらめました

だってうさ太はお金を持っていなかったからです

いつもかあちゃんが白いエプロンのポケットから白いお財布をだしお金をはらっていたのです

パン屋さんはうさ太が公園に行ったときにはきませんでした

公園に行かないときも耳を動かしてみましたがパン屋さんはきていないようでした

そうやってカゲのかあちゃんとしばらくすごしていましたいついつのまにかうさ太はなにもできないカゲのかあちゃんの面倒えおみるかのように・・・かあちゃん○○しようね・・・声をかけていたのです

うさ太は積極的に動くようになりました かあちゃんに甘えていたときのうさ太とは違ってきていました

そんなときうさ太は公園の帰り道にすれ違った人の声をきいたのです かあちゃんといたときはまわりの人の言葉は耳にはいりませんでしたからその言葉はズ~~ンと心にしみこみました

「そうだもうかあちゃんはいないんだ・・カゲのかあちゃんはおらにしかみえないんだからね」

声にだしたみるとそれははっきりと実感できました

家に着くとうさ太は黄色い長靴とシャベル、バケツをきれいにふき棚の奥にしまいました

そして白い長靴を玄関に置き白いエプロンをしました

ポケットがふくらんでいるので手をいれると白いお財布がでてきました 中にはちゃんとお金がはいっていました

「かあちゃんはおらが困らないようにちゃんとしておいてくれたんだね」

そしてカゲのかあちゃんに・・・かあちゃんおらのそばで見守っていてくれてありがとう、おらはやっとひとりでやっていける自信がついたよ、今晩魔女さんにかあちゃんをかえそうと思ってる、ごめんねかあちゃん・・・

するとカゲのかあちゃんは抱きしめることはできないのにまるで抱きしめるようにうさ太のからだのまわりに手をまわしました

うさ太はお仕事をがんばってしてしまい夜になってから外におくと窓のところにいって・・・魔女さん魔女さんおらのところにきてください・・・と心の声で呼びました

しばらくすると「ガタガタギシギシ・・・」魔女のほうきの音が聞こえてきました

「やあうさ太どうかしたのかい?」魔女は心配そうな声でききました「魔女さんお仕事なのに呼び出してごめんなさい」

「いやいや・・・そんなことはかまわないさ」実は魔女は居眠りをしていてまだ仕事にでていなくてうさ太の声でとびおきたのですけどね

「魔女さんカゲのかあちゃんをお返ししようと思って・・・」

そしておわてて棚の奥にしまった黄色い長靴を取り出してきて

「おらはもう赤ちゃんじゃないんだ、この長靴に無理に足をいれていたんだよ もうかあちゃんの買ってくれた白い長靴をはかなければいけなかったんだ」

うさ太とくらべるとその長靴はあまりにも小さく見えました

「それでうさ太はひとりで大丈夫かい?」「うん、もう大丈夫だよ ちゃんと大きくならなければかあちゃんのいるお月様にいけないと困るからね」

「それならいいけどね・・・うさ太後ろをむいていなさい かあちゃんを消すところは見ないほうがいいからね」

うさ太はかあちゃんに・・・さよなら母ちゃん元気でね・・・と言いました

かあちゃんはうさ太を見つめ手を小さく振りました

うさ太は後ろを向きました きっとすごい魔法消すからうさ太のは見せたくなかったのでしょうか

魔女はカゲのかあちゃんをヒラリと床の上にひろげるように置きうさ太のほうを見ながら黄色い長靴を取りカゲのかあちゃんでくるくるとくるむとサッとポケットにいれてしまいました

まあまあ、なんという魔法でしょうか それに長靴を盗むなんてなんてやつでしょう

長靴が欲しければうさ太にそう言えばくれたでしょうに・・・

魔女は「終わったようさ太」と声をかけました

うさ太は振り返りキョロキョロと見ました

・・・かあちゃん・・・呼んでみました 声なんてかえっては

ないけど

うさ太は長靴が無くなっていることは気がつかないようでした

「じゃわたしはもういくよ・・・また用があったら呼んでおくれ わたしにできることならなんでもしてやるからね」

ガタガタギシギシほうきをならして魔女は飛び去って行きました

「ああ・・・ほんとのひとりになったんだね かあちゃんおらがんばるからね かあちゃんに会えるときはおらはおとなになってるよ・・・でもかあちゃんには甘えさせてね」

お月様は三日月でした・・・