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うさ太の家に・・・

運転手は魔女の家のドアをノックにました

「コンコン」でも返事はありません

毎度のことなのでかまわずドアを開けました

きにろはテーブルに突っ伏して眠っていました カップがテーブルの下に落ちていました

「フフフ」運転手は口元を抑えて笑いをこらえました そしてきにろのそばをそっと通り壁に立てかけてある魔法のほうきのそばに行きそって心の声でささやきました

「どうか力をかしてください あなたの力が必要なんです」するとほうきはカタカタと小さく音をたてました

まるで「まかせてください」というように・・・

「きにろさんきにろさん起きてください」運転手はきにろの肩に手をおきゆすりました

「アワワワ~」きにろは飛び起きました

「わたしですよ~さあうさ太の家に行きますよ」「わかってるよわかってる」きにろはよだれをふきながら立ち上がりました

「ねえきにろさん こんちゃんのビンをうさ太の家に持っていこうと思うんですよ」「こんちゃんを?」

「あそこは月と同じ状態です だからこんちゃんにはいごこちのいい場所なんですよ」「こんちゃんんは月からきたのかい?」「ええそうですよ きにろさんもそうですよ」

「え~~~っわたしも?」きにろはびっくりしてしまいました 空から落ちてきたとはしっていたけどまさか月からとは・・・

「そのことやら長耳族のことを話したいと思っているんですよ 二人ともなにも知らないのですからね」

運転手はこんちゃんのビンを手にとりきにろをせかしました「さあさあ行きますよ」

「こんちゃんはわたしがもっていくよ」きにろはこんちゃんのビンを運転手からうばいとりました

「はいはい・・・さすがママですねぇ・・・」

「えっ・・ママ?」「いえいえさすが~~ですねってっていっただけですよ」

きにろは腑に落ちないように首をかしげながら でもこんちゃんを抱きしめるようにビンを持ち運転手に続きました

外にでてしばらく歩くとバスが止まっていました

「わ~~ドリームバスに乗っていくのかい?」「ええそうですよ 歩いていくには遠いでしょ?」

バスに乗るときにろはうれしそうに「プップーップップー」と唄いはじめました「アレレ唄は流さないの?」

「唄はなしですよ 誰かが載せてくれっていったらどうするんですか」「それはそうだね・・・でも聞きたかったなあ」

バスは小高い丘の上にぼんやりと見えているうさ太の家にむかって走りました

うさ太がゆう太といる家です 運転手は気持ちをおちつけるように大きく息をすいました

きにろはこんちゃんを抱きしめうさ太の家のドアをたたきました「うさ太~~わたしだよ~きにろだよ~」

ドアがあきました・・・


うさ太の哀しみ

うさ太は眠っているゆう太を見つめ微笑みました

「これはゆう太だって証拠だね」うさ太はゆう太の右耳をそっとなぜながら思いました

ゆう太の右耳の先は少し外側にまがるのです

そっと伸ばしてもしばらくするとちょこっと曲がります ほんとに少しですからこれうさ太にしかわからないのかもしれません

「かわいいな~きっとおらのこともかあちゃんはそう思ったんさろうな~」

窓から少し欠けた月を見つめて哀しげに顔をくもらせました

「おらは・・・ゆう太をおいて月にいけるだろうか・・・でもいかなければかあちゃんには会えないし」

かあちゃんを思うと胸はりさけそうでした

ゆう太を見るとひとりぼっちになった時の哀しみを思い出しとてもゆう太をひとりにできないと思うのです

別れはまだまだ先のことでしょうがうさ太は考えずにはいられないのです

「お月様 ゆう太と一緒に行ってはいけないのですか?どうか一緒に行かせてください お願いします」

うさ太は祈りました

お月様は雲の影に隠れてしまいました

うさ太はゆう太を見つめました・・・涙は流さなかったけれどゴクリと飲み込んだ哀しみはちょっと涙の味がしました


運転手の思い

運転手はきにろの話を聞きながら棚に置かれているこんちゃんのビンを見ていました

・・・こんちゃん・・・心の声で呼んでみました

なにも返事はありません「こんちゃんは眠っているんだね~」とつぶやきました

 

きにろは話疲れてシチューを飲んでいました

・・・きにろママ・・・運転手は心の声でつぶやいてみました

「へっ?」きにろはキョロキョロとまわりを見回し不思議そうな顔をしました

「ハハハなんでもないですよ」運転手はおかしそうに笑い「ところできにろさん」

「はい?」

「今日あたりうさ太の家にいきませんか?」

「今日・・・これから行くのかね」

「いえいえもう少し後ですよ」

「まあそれはかまわないけどね」

「出直してきますよ 持っていくものもありますからね」

運転手はうさ太をゆう太一緒に月に行かせられるようにいろいろ思いました

魔女の家にそのヒントがあるのを運転手は気がつきました

うさ太親子を月に無事行かせなければ・・・それが運転手の使命であるかのように

「じゃ後でまたきますね」

「はいはいわかりました」きにろは半分居眠りをしながら返事をました


きにろの昔ばなし・・・

「こんちゃ~ん」「クククク」「こんちゃ~ん」「クククク」ようやくこんちゃんが泣いている場所がわかりました

なんとゴミ置き場だったのです たくさんのゴミ袋がありました この中のどれかにこんちゃんがいるのです

ここはわたしのとって危険な場所です 人間の生活圏の中ですから 見つかれば・・・火あぶりってこともありますからね(魔女ばあちゃんが言ってました)

わたしは魔法を使いました うまくいくかわからなかったけれど・・・手をひろげ「こんちゃんのふくろ~~~こっちにこ~~い」するとひとつの袋が浮かびわたしのほうに動いてきました

まるで魔女ばあちゃんが魔法をつかったみたいに・・・

「こんちゃん」「ククゥ」

袋を急いであけました・・・アアこんちゃんが・・・

いろんなぬいぐるみやおもちゃにまざって汚れて目や鼻もとれ耳も片一方なくなり・・・かわいそうに

「魔女さん急いで急いで魔女さんのお家に連れてって」

わたしはこんちゃんを抱きしめほうきに乗り大急ぎで飛び立ちました わたしだって怖くて早くその場所を離れたかったのです

家にもどるとこんちゃんをテーブルのシチュー鍋のそばの暖かそうなところにおき「いったいどうしたの?坊やとママはどうしたの?」訪ねました

「お願い・・・あの棚にある薬草の空きびんを・・もってきて・・・そして若返りの薬草の粒を一つ入れて」

苦しそうに言いました わたしは言われたとおりにビンに薬草の粒を入れこんちゃんのそばに置きました

「ぼくの首を・・・胴体と切り離して」「ェッ!!」

「お願い・・・急いで」

こんちゃんは頭に心があるのだからと言われたとうりに切り離しなしました

「頭の中から綿を取り出して・・・その中にぼくの心があるから外に出したてこんちゃんの頭の・・・ピンクの布でくるんでビンに入れふたをして」

綿の中から小さなおもちのようなものがでてきました

少し硬くなっているようなおもちです

ビンに入れふたをすると「ああ・・・ああ・・・生き返ったようだよ・・・もうだめかと思った・・・魔女さんのお役にたてなかったらどうしようと思ったんです・・・」

「なにがあったの?」

「うん・・・ぼくのぬいぐるみの役目がおわったんです ママのおうちは引っ越すことが決まって荷物の整理が始まったんです その前から坊やはもうわたしに関心が無くなっていて・・・おもちゃ箱に放り込まれていたぼくをママは棚においてくれました そこは坊やがよく見える場所でした ママもよく見えました ぼくは二人を記憶の中にしまいそろそろ魔女さんのところに行こうと思い始めていたのです

荷物の整理でママは坊やに・・・こんちゃんはどうするの?・・・と聞いたのです 坊やは・・・いらな~~い・・・・と ママはぼくをそっと抱きしめました

そしてゴミ袋に・・・ママの心の声が最後にきこえました・・・ごめんねこんちゃん・・・」

「なんてことをするんだ」わたしは腹がたちました

「ううんぼくはこうなることを予感したいたから平気だったけど・・・捨てられてからはなにも見えないしポイポイポイ放り投げられるし・・・早く夜になってくれないかと思ったんです 夜でないと魔女さんを呼べないものね」

こんちゃんは淡々と話しました

でも・・・「これからぼくは眠ります いつか魔女さんのお役にたつ日まで眠って・・・おやすみママ・・・おや・・す・・・」そう言ってこんちゃんは眠ってしまいました

おやすみママ・・・なんてきっと思い出していたんでしょうね ママと坊やを

 

魔女ばあちゃんもこんちゃんも寝てしまいわたしはひとりで毎日をなんとなくぼんやりすごしていました

夜になると・・・森に薬草を取りに行ったりほうきに乗って空をなんとなく飛んでみたり・・・水晶玉をクルクルのぞいてみたり・・・シチューを飲んで居眠りしたり・・・

そんなある日わたしは水晶玉の中に長耳の二人を見つけたのです

うさ太とかあちゃんでした

うさ太はわたしが魔女ばあちゃんに助けられたころとおなじくらいの大きさでした

黄色くて目が青くて・・・わたしと同じ

それからはうさ太とかあちゃんのことが気になって目がはなせなくなり・・・

 


もう少し続くきにろの昔ばなし

暗くなってもう坊やもママも眠っているころにわたしはこんちゃんのもとに向かいました

小さな灯りがついている部屋の窓からそっとのぞくとこんちゃんは眠っている坊やのそばにころがっていました

どうやら坊やの寝相が悪いので転がされたのでしょう

「こんちゃん」呼びかけると「魔女さんやっぱりきてくれたんですね」と返事がありました

「これから魔法でわたしのところまで引き寄せるけどびっくりしないでね」と言ったけれどドキドキしていたのはわたしのほうでした「はいわかりました」こんちゃんはこたえました

魔女ばあちゃんに教えてもらったとおり手をくるくる回しながら「こったにおいで、こっちにおいで」と小さく唱えました するとこんちゃんはスーッとすべるようにわたしのほうにやってきました まるで魔女ばあちゃんが魔法をかけているかのようでした なにしろわたしが練習したときはユラユラゆれたりコロンと落ちてしまったりと失敗続きでどうしようと思ったくらいでなんとか落ちないで手元にくるようになった・・・状態だったからです

手の中にこんちゃんがくると・・・わたしは「ああなんて可愛いんだろう」と心がワクワクしました こんな気持ちは初めてでとまどいました

「こんちゃんの心は頭にあるの?それともお腹のほう?」

「頭の中にぼくはいるんだよ」「頭にあるんだね じゃ魔法をかけるから見えたら教えてね」「はい」

わたしはこんちゃんの頭に手を当てて{見えるようになあれ 見えるようになあれ 見えるようになあれ・・}と三回いいました すると「あっ!見えるよ」こんちゃんの声が心にひびきました「魔女さんも見えるよ・・・ああやっぱり魔女さんは・・・」

わたしはこんちゃんのうれしそうな声にうれしくなりました そんな力があるなんてしらなかったのでなんだか不思議な気持ちでした

「坊やたちが起きるといけないからもとにもどすね」そう

言うと「本当にありがとうございます 魔女さんを感じたとききっと願いを叶えてくれると思ったんです ぼくがこのぬいぐるみとしての務めが終わったらぼくの心を魔女さんの必要とする日まで持っていてくださいね」

「いやいや心はもらわなくてもいいんだよ 魔女はそんなことしないんだよ・・・でもぬいぐるみの務めが終わるってどういうことなの」

「坊やが大きくなればぬいぐるみには関心がなくなるんです・・・そのときがきたらまた声をかけますからきてくださいね」そのとき坊やが寝返りをうち手がこんちゃんをさがすかのようにあちこち動きました

「あっもうもどらなければ・・・坊やもママもよく見えます」

わたしはまた手を今度は逆にクルクルまわしました こんちゃんは無事坊やの手の中もどり坊やはこんちゃんを抱きしめました もちろん窓の外にいたなんて気づきもしなくてね

「わたしがこんちゃんを必要とする?・・・」なんのことやらわかりませんね

家には魔女ばあちゃんはいません こんちゃんは幸せそうです(時々除いてみていたんです)

月日がずいぶん流れたと思います

それは突然でした・・・「ククゥククゥククゥ」こんちゃんの呼び声でした 悲しそうな泣いているような声でした

わたしは慌ててほうきから落ちそうになりながらこんちゃんのいる家にむかいました

「あれれ?真っ暗だ」いつもこのくらいの時間だとちいさな明かりが見えるのですが・・・わたしには真っ暗だからって見えないわけではないので窓からのぞきました

「アワワワ???」部屋は真っ暗なだけでなくなにもなかったのです からっぽです

「こんちゃん、こんちゃん」わたしは呼びました

「ククゥククゥ魔女さ~ん」

どこかからこんちゃんの声が・・・でも部屋からではないのです

こんちゃんはどこ?