そして・・・誰もいなくなったみたい

人間さんが差し出したものは確かに「命の種」でした
わたしのお腹のふくろの中にいれるとふくろの口はピタリとはりつきもうあくことはありませんでした
「赤ちゃんもちがこの中にできるのでしょうか?」「赤ちゃんができるのですよ」人間さんのことばに
「おやおや・・・」赤ちゃんができるとは思ってもいないことでしたね
それから人間さんと一緒に薬草畑ですごしました
薬草を食べたりシチューをつくって飲んだり・・・人間さんとのおしゃべりは楽しいものでした
お腹は徐々に大きくなってくる不安も人間さんは「なんの心配もないですよ」と励ましてくれたのです
仲間にも赤ちゃんができたことを知らせたのでみんなやってきて大きなおなかを見てびっくりしていました
丸いお月様をいくつか数えてある満月の夜のこと・・・「あれあれ」わたしは違和感を感じお腹を見たのです
ピタリと閉じていた袋の口が開き始めたのです
「赤ちゃんが生まれますよ」人間さんが言いました
袋の口がパクリと大きく開くとモゾモゾと動いたと思ったら顔が見えました
「まあまあ」「おやおや」「これはこれは」仲間たちも声をあげました
人間さんが手をのべて赤ちゃんを抱き上げました なんということか赤ちゃんは人間さんの姿をしていたのです
わたしの腕の中に赤ちゃんが・・・ああなんてかわいいのでしょう

仲間のひとりがかわいい服をだしました 赤ちゃんに着せるとみんな「ワァ~~~」と声をあげました
お月様では服を着るということはないんですけどね 灰色族が着ているのは服ではなく布です
「名前をつけましょう」人間さんが言いました
「ママがつけなくては」みんながわたしに言いました
わたしは迷うことなく「き・に・ろ」と言うと「それはいい名前です」みんながニコニコうなずきました

「きにろ」わたしがこの名前にこだわるのは・・・灰色族としてお月様で暮らしていたとき「きにろ」と呼ばれていたのです

ひとりごとが長くなってしまったね
はやく帰らなければあの子が泣いているよ 人間パパさんも困っているかもしれない
わたしのシチュー鍋を持って帰ろうと思っていたのだけれどこのままおいといたほうがよさそうだね
いつか役にたつかもしれないしね・・・・

魔女ママは帰って行きました
もう誰もいません
でも・・・いつか・・・

====魔女きにろのひとりごと====    おしまい

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