暗くなってもう坊やもママも眠っているころにわたしはこんちゃんのもとに向かいました
小さな灯りがついている部屋の窓からそっとのぞくとこんちゃんは眠っている坊やのそばにころがっていました
どうやら坊やの寝相が悪いので転がされたのでしょう
「こんちゃん」呼びかけると「魔女さんやっぱりきてくれたんですね」と返事がありました
「これから魔法でわたしのところまで引き寄せるけどびっくりしないでね」と言ったけれどドキドキしていたのはわたしのほうでした「はいわかりました」こんちゃんはこたえました
魔女ばあちゃんに教えてもらったとおり手をくるくる回しながら「こったにおいで、こっちにおいで」と小さく唱えました するとこんちゃんはスーッとすべるようにわたしのほうにやってきました まるで魔女ばあちゃんが魔法をかけているかのようでした なにしろわたしが練習したときはユラユラゆれたりコロンと落ちてしまったりと失敗続きでどうしようと思ったくらいでなんとか落ちないで手元にくるようになった・・・状態だったからです
手の中にこんちゃんがくると・・・わたしは「ああなんて可愛いんだろう」と心がワクワクしました こんな気持ちは初めてでとまどいました
「こんちゃんの心は頭にあるの?それともお腹のほう?」
「頭の中にぼくはいるんだよ」「頭にあるんだね じゃ魔法をかけるから見えたら教えてね」「はい」
わたしはこんちゃんの頭に手を当てて{見えるようになあれ 見えるようになあれ 見えるようになあれ・・}と三回いいました すると「あっ!見えるよ」こんちゃんの声が心にひびきました「魔女さんも見えるよ・・・ああやっぱり魔女さんは・・・」
わたしはこんちゃんのうれしそうな声にうれしくなりました そんな力があるなんてしらなかったのでなんだか不思議な気持ちでした
「坊やたちが起きるといけないからもとにもどすね」そう
言うと「本当にありがとうございます 魔女さんを感じたとききっと願いを叶えてくれると思ったんです ぼくがこのぬいぐるみとしての務めが終わったらぼくの心を魔女さんの必要とする日まで持っていてくださいね」
「いやいや心はもらわなくてもいいんだよ 魔女はそんなことしないんだよ・・・でもぬいぐるみの務めが終わるってどういうことなの」
「坊やが大きくなればぬいぐるみには関心がなくなるんです・・・そのときがきたらまた声をかけますからきてくださいね」そのとき坊やが寝返りをうち手がこんちゃんをさがすかのようにあちこち動きました
「あっもうもどらなければ・・・坊やもママもよく見えます」
わたしはまた手を今度は逆にクルクルまわしました こんちゃんは無事坊やの手の中もどり坊やはこんちゃんを抱きしめました もちろん窓の外にいたなんて気づきもしなくてね
「わたしがこんちゃんを必要とする?・・・」なんのことやらわかりませんね
家には魔女ばあちゃんはいません こんちゃんは幸せそうです(時々除いてみていたんです)
月日がずいぶん流れたと思います
それは突然でした・・・「ククゥククゥククゥ」こんちゃんの呼び声でした 悲しそうな泣いているような声でした
わたしは慌ててほうきから落ちそうになりながらこんちゃんのいる家にむかいました
「あれれ?真っ暗だ」いつもこのくらいの時間だとちいさな明かりが見えるのですが・・・わたしには真っ暗だからって見えないわけではないので窓からのぞきました
「アワワワ???」部屋は真っ暗なだけでなくなにもなかったのです からっぽです
「こんちゃん、こんちゃん」わたしは呼びました
「ククゥククゥ魔女さ~ん」
どこかからこんちゃんの声が・・・でも部屋からではないのです
こんちゃんはどこ?