ミカはおにいちゃんの遠足のおみやげの木の葉やどんぐりで楽しそうに遊びました。
魔女が見せてくれた公園はミカにとって思い出すだけでその世界にいるような気持ちにさせてくれたからです。
・・・でもそれからしばらくするとミカは時々ふっと手を止め遠くの世界をみるような奇妙な様子を見せるようになりました。
「ミカはどうしたんだろう」その様子に気がついたママとルナは不安気に顔を見合わせました。
「ミカ!!」ルナが声をかけると「?」となんのことかわからないようでまたいつものミカにもどりました。
夜中・・・いつものようにミカは目がさめました。そんな時は窓から空を見るのです。
丸いお月様がミカをみつめていました。「お月様・・・」ミカはつぶやきました。するとお月様が少し大きくなりました。
ミカはポロリと涙を落としました。そして心の声でママとおにいちゃんを呼びました。
「ママ、おにいちゃん、すぐにきて」
「どうしたの?」ママとおにいちゃんが部屋にとびこんできました。
「お月様がよんでるの・・・行かなければならないの・・・」ママとルナはお月様を見上げなした。またお月様は少し大きくなりました。
「ミカ」ママはミカを抱きしめました。小さなミカはさらに小さくなったうえにフワフワとゆれていました。
「ママおにいちゃん・・・さようなら・・・」というとフワフワと白い煙になっていきました。
「ママ~~」ルナは泣き声をあげました。「ルナ・・・窓をあけて・・・」ママの声にルナは泣きながら窓をあけました。
ミカの小さい白い煙がフワフワ窓の外に浮かんでいきました。
ミカの声が聞こえました。「ママ、おにいちゃんありがとう・・・忘れないよ、ぜったいに・・・」
白い煙はどんどん空をのぼっていきました。お月様はさらに大きくなり・・・そしてミカの煙をうけとめました。
ママとルナは涙を流しながらいつまでも空を見上げていました。
やがて・・・お月様はもとの大きさになりました。
・・・・・
ママとルナはミカのベッドのふちにすわって空を見上げていました。ゆりかごのような三日月の夜でした。
「ママ・・・ミカはお月様で幸せにくらしているかな~」
「もちろんそうよ。ミカはお月様からきた魔女さんのうまれかわりだったんだもの。きっと仲間に会えて幸せに楽しく暮らしていますよ」
「そうだよね・・・地球ではミカの世界はこのベッドの上だけだったんだもの・・・」
「さあ・・・ルナもうおやすみなさい。明日はパパのところにいくのだから」
「・・・もう少しミカを見ていたいから」「ママは片付けをしてしまうわね」
ルナは三日月を見つめていました。「?」窓の外でなにかが動きました。「魔女さん?」心の声でそっと呼びかけました。
ミカには姿を見せた魔女だけどルナには見せることがなかったので驚かしてはいけないと思ったからです。
ピョコンと顔がのぞきました。ミカが言っていたような長い耳とおとぼけ顔のうさぎもような顔でした。
「ぼくはルナだよ」「知っているよ・・・ミカはどこにいるのかい?」
「ミカはお月様にいっちゃったんだよ」魔女は空を見上げました。
「いつもどってくるのかね」「・・・ミカはお月様に帰ったんだよ・・・もうもどってこないと思うよ」
「おやおや・・・」魔女はまた月を見上げました。ちょっと寂しそうにみえました。
「ぼくも明日ママと一緒にパパのところにいくんだよ。ここはもう誰もいなくなってしまうんだよ」
魔女は軽く手をあげるとほうきに乗って飛び立ちました。その姿はまるで月をめざしているようにみえました。
「魔女さんもミカがいなくなってさみしいんだろうな・・・ミカはほんとにかわいかったもの。姿は人間とは違っていたけど・・・
ママは魔女さんににているって言ったけど・・・あの魔女さんとはずいぶんちがうな~」
魔女は窓から中を覗いてみました。誰もいません。ミカがいたベッドだけがポツンとおかれていました。
やがて・・・家が取り壊されまわりの雑木林が開発され・・・マンションやスーパーや家々が建ち始め人々が大勢行きかうように
なると魔女はもうそこに近づくことはなくなりました。
・・・・
・・・・
・・・・
こんちゃんの声が聞こえてくるまでは・・・・
ミカとルナ おしまい