こんちゃんときにろと・・・そして・・・

のくらいの時間が流れたのでしょうか
静かな家の中でこんちゃんは眠っていましたが・・・おやおやゴトゴトとビンが揺れ始めました
少しずつこんちゃんもちが膨らみ始めたようです
ガタン大きな音とともにビンが倒れました
そしてピンクのぬいぐるみの頭の部分にはいったこんちゃんもちがキューっとビンから出てきました
ワァこれは大変です このままではこんちゃんもちは死んでしまいます
誰もいないのでこんちゃんもちはビンの外にころがっているしかありません
少しピンクがかったこんちゃんもちは誰かをさがすようにぷくぷくとゆれています
ああ・・・どうしましょう

日が暮れました・・・その時です
窓から魔法のほうきに乗った誰かが飛び込んできたのです「ワァワァーー」急ブレーキをかけるように
止めたのでもう少しで転がり落ちそうになりました
こんな慌て者は・・・やっぱりきにろでした 少し大きくなっていましたがきにろです
「アッこんちゃんが」テーブルの上でふるえているこんちゃんもちを見つけいそいでテーブルのそばにいきました
そのとききにろのプクプクにふくらんだしっぽがポトンと落ちました
「ああよかった間に合ったよ」
自分のしっぽをひろいあげテーブルの上にあるシチュー鍋の中に白いおもちをいれました
そしてこんちゃんもちをそっと同じように鍋にいれました
(ごめんね遅くなっちゃって)
それからきにろは月に行って覚えた歌をうたいながらそっと二つのおもちを混ぜ始めました
「そーれそーれまぜましょうあかちゃんおもちをまぜましょう そーれそれそれまぜましょうかわいいこんちゃん生まれるように」
赤ちゃんおもちは二つではなかなか赤ちゃんが誕生しないのです
きにろは時間をかけあきらめずに混ぜ続けました
「フワフワフワ~~~」小さなピンクのけむりがきにろの手のほうに流れてきました
きにろはそっと手の上に受け止めました
小さな赤ちゃんになりました 薄いピンクの赤ちゃんです 耳は頭の上にあり・・・ぬいぐるみこんちゃんと同じ三角の耳でした
「まあほんとにこんちゃん・・・こんちゃんやっとあえましたね ママですよ」
きにろの言葉にこんちゃんはパチリと目をあけました
なんときれいな紫色です 薄いピンクの肌にとてもあっていました
「ママ」小さな声がしました きにろはそっと抱きしめたのですが・・・なんだかこんちゃんの呼吸が変です
「こんちゃんこんちゃんどうしたの」きにろはびっくりしてしまいました

その時後ろでガタンと音がしました
きにろは振り向きました・・・そこには女の人が立っていました
「アッ・・・ママ」きにろは自分の言葉に驚いてしまいました
ママ・・・ってどういうことでしょう


そして誰もいなくなった・・・かな?

運転手はしばらく月を見つめていましたがやがて窓辺を離れテーブルのそばにいきました
テーブルにはうさ太が並べたこんちゃんおもちのビンと月の香りが並べて置いてありました
(こんちゃんもうじきですよ)心の声で話しかけましたがもちろん返事はありませんでした
(わたしはまだ月にもどるときではありませんね・・・さて・・・地球を見物でもしてきましょうか・・・そのときが
きたらもどってきますからね)
運転手がドアを開け出て行きました
シ~~~ンとなった家の中 誰もいなくなった・・・のではありませんね

きにろが暮らしていた魔女ばあちゃんの家があった森はどんどん開発がすすみました
魔女ばあちゃんの家は魔法の木がつかわれているのでなかなか人間さんには認識できませんので森の木を切るように
こわされてしまいました
ただひとり・・・人間さんが散らばった本を見つけました「おや?本がこんなところに}
でも中は真っ白でなにも書いてありません 何冊かみているうちにあのきにろと魔女ばあちゃんが消し忘れてしまった
本を見つけてしまいました「これは・・・この文字か模様かわからないこの本は・・・まさか・・・」
人間さんは本をポケットにいれました
まさか解読はできないと思いますが・・・

もう長耳族は地球にはいないのでしょうか・・・いいえちがいますよね
黒色さん・・・魔女さんたちがいます
魔女さんたちは最近頻繁に集まっては会合を開いています
どうやら重大な出来事がおこるのを待っているようです
黒色さんたちが地球にやってきた秘密の目的 そのためにやってしまったこと・・・
それでも黒色さんたち 月の灰色さんたちは待ち焦がれているのです


さよならうさ太 さよならきにろ

その日がやってきました
夕方運転手はきにろを迎えにやってきました
「さあきにろさんいよいよですよ」
きにろは緊張した顔でうなずきました
「ほうきをわすれないようにね」「忘れるなんてそんなことないですよ」
「それとシチュー鍋ももってください」きにろは不思議そうに「鍋?」といいました
「そうですよ それは大事な鍋です 必要になるときが必ずきますからね」
きにろはシチュー鍋をきれいに洗いました
「ここに何冊か本がありますね・・・これはこのままではいけません きにろさん魔法で本の中身を消してしまってください」
「なぜ消さなければいけないの?」「ここはもうじき開発がすすみます 人間さんになにか見られたら困ることもあるかもしれないからです」
「魔女ばあちゃんが困るのでは?」「大丈夫ですよ 魔女ばあちゃんはこういうことは何度も経験していますからね」
きにろは魔法をかけ本の中身を消しました でも一冊だけ消えないものがありました でもきにろは気が付きませんでした
魔女ばあちゃんもうっかり力をかすことをしなかったのです その一冊の本はやがてひとりの人間さんの手に・・・

運転手ときにろは家の中をみまわしました「あっ・・・きにろさんエプロンをしてポケットに若返りの薬草をいれてください
魔法のほうきに必要ですからね」きにろは言われた通りにしました
きにろは魔女ばあちゃんの家にさよならをしてバスに乗ってうさ太の家にむかいました

うさ太は家の中をきれいにかたずけていました
ふとんをたたみ棚にいれきれいに洗ったタオルもいれました
掃除機をかけ台所もきれいにしテーブルもきれいにふきました こんちゃんの入ったビンと月の香りのびんと並べておき
「大丈夫だよ ママはちゃんと迎えにきてくれるからね」と心の声ではなしました
うさ太は自分のからだの色がクリーム色になったのはわけがあるんだなと思いました
ゆう太はおすわりができるようになりカチャカチャと音のするおもちゃで遊んでいます うさ太の遊んでいたおもちゃです
かあちゃんが作ってくれたものです
日が暮れてきました ゆう太はまだおきています「まだきにろさんたちはこないんだね」とつぶやきました
遠くでバスの走る音が聞こえ始めました
するとゆう太はコロンと横になると眠り始めました うさたはゆう太をだきあげました
「そろそろきたようだね」つぶやくとドアを見つめました
カタンと小さな音がしてドアがあきました
ほうきを持ったきにろとシチュー鍋を持った運転手がはいってきました
「おやおやきれいにかたずけましたね」「はい・・・もうお別れだから」うさ太はちょっとさみしげな顔をしました
「わたしも家をかたずけてきましたよ」きにろもふっと遠くを見るような顔になりました
「ふたりは地球育ちだから別れはつらいでしょうね・・・でも月もなかなかいいものですよ」運転手はなぐさめるような口調になりました
「うさ太さん白いエプロンをしてください」「はい」運転手に言われうさ太はゆう太をしたにおろそうとするときにろが手をのばし抱いてくれました
エプロンをすると運転手はエプロンの裾を胴のひもにしばりつけ「きにろさんほどけないように魔法をかけてくださいね」ととたのみました
きにろは魔法の言葉をいいました「さあこれでいいですよ ゆう太さんをエプロンにいれてください ここにいれておけば安全ですからうさ太さんは
ほうきにしっかりつかまっていてくださいね」
きにろがゆう太をエプロンにいれました そしてほうきの準備をしはじめました
「お月様に行ってかあちゃんにいっぱい甘えてくださいね」運転手は小さい声でいいました
するとうさ太は運転手に抱き付き(本当は抱きしめたんだけどうさ太のほうが小さいのでだきついたみたいになっちゃんだよ)
心の声でなにか言いました すると運転手はびっくりし同じように心の声でこたえました
このやりとりはきにろは気が付いていなかったのですが魔法のほうきは気が付いたようですね
「さあうさ太も乗ってよ」きにろが声をかけたのであわててうさたはほうきに乗りました
「準備はいいですね しっかりつかまってくださいよ」運転手はそういうと壁のうすいバリアをバリバリとはがし
二人をくるむようにかぶせました「これでくるめば息が苦しくはならないでしょう まあこれがないからって長耳族にはどうってことないんですけどね さあ出発してください」その声できにろは窓から飛び立ちました
ゆっくりと・・・徐々にスピードを上げ・・・だんだん高く高く・・・さらにスピードを上げ・・・
やがてその姿は小さくなり・・・さらに小さくなり・・・やがて点になりついに見えなくなりました
運転手はじっと空を見上げ目元をふきました
さよならうさ太 さよならきにろ・・・

 


二人は兄弟

きにろが言いました「うさ太は月に行くのは不安じゃないの?¥・・・うさ太にはかあちゃんがいるか・・・」わたしとはちがうね」
「きにろさんは不安なの?」「・・・わたしは月にはなにもないからね・・・記憶も思い出も知り合いもいない」
「だけどおらとは兄弟じゃないの」「えっ?」きにろはうさ太の言葉に驚いた顔をしました
「きにろさんよおらは同じ赤ちゃんもちから生まれたんだよ だから兄弟だよ ひとりじゃないよ」
その言葉にきにろはニコニコとして「兄弟か~ウフフ」とうれしそうでした
うさ太は「きにろさんにもかあちゃんがいるよ」といいそうになりました すると(時の流れは流れるままに)と
心の中に聞こえてきました 「うん」うさ太はうなすくと言葉をのみこみました
このごろうさ太はいろんなことがみえてきていたのです でも・・・時の流れは流れるままにしましょう
やがてわかるときがきますからね

「さて・・・きにろさんそろそろ帰りますよ」運転手のことばにきにろはパンを口の中につっこみました
「アハハそんなにいそがなくても・・・残りは家に持って帰りゆっくりたべればいいですよ」
うさ太も笑いました (きにろさんってかわいいね)

「それでは・・・」運転手はうさ太をはげますように見ました

「はい」うさ太もしっかりと返事をしました
二人は帰って行きました バスの走る音が聞こえました
「アウウ~~」ゆう太が目をさましました
「ウフフそういうわけだったんだね」うさ太はゆう太がすぐ眠ってしまうわけがわかりました
「ほらゆう太・・・これがクリームだよ この味をしっかり覚えておくんだよ きっとやくにたつからね」
クリームパンのクリームをほんの少しなめさせました
ゆうたはぺろぺろとなめました
チョコレートパンのチョコレート メロンパンのカリカリ部分 ゆう太はその味を記憶しました
これも時の流れですね やがていつかゆう太はこの味を思いだして・・・

それからきにろは毎晩ほうきに乗って高く飛んだり風の吹く夜もヨロヨロしないように飛ぶ練習をしたりと
がんばりました
うさ太はゆう太にしっかりおもちを食べさせました「ああちゃん」ゆう太はうさ太を呼ぶようになりました
からだも少し大きくなりしっかりしてきました
そしていよいよその日がやってくるのです・・・うまくお月さまに行けるのでしょうか


うさ太脱出計画

「おらはゆう太と地球に残ってもいいんだよ ゆう太がお月様に戻れる日までおらはずっとそばにいようと思ってるよ」
「でもそうしたらうさ太は月に戻るチャンスがなくなってしまうんだよ」
「うんわかってるよ それでもいいと思ってるよ」
「それじゃうさ太はひとりぼっちになってしまうんだよ」きにろが泣きそうになりながら言いました
「うん・・・そうだね でもそれでもいいと思ってる」うさ太はゆるぎない強い言葉でこたえました
「うさ太さんわたしがどんなことをしても月にかえしてあげます もちろんゆう太さんも一緒です」運転手は
きりっとした声で言いました
うさ太はじっと運転手を見つめました「そっか・・・やっぱり・・・うんわかったよ 運転手さんにまかせるよ・・・ありがとう」

「このあいだきにろさんが言った掃除機のことを調べて見たのですよ 確かに馬力があるし丈夫そうだし・・・でも
それはこの地球上においてはですよね 本当に強ければきっとロケットにもつかわれたでしょう でもそれはないところをみると
宇宙ではもろいのかもしれません そこでまた考えたのです 強いものはなにかと・・・それは何といっても魔法の放棄です」
「えっ?魔女ばあちゃんの?」「そうですよ 大昔月からこの地球にとんできたのですよ それに今もちゃんと飛んでいるのですよ」

「それはそうだね」きにろも納得したようにうなづきました
「そこでうさ太さんの脱出にはほうきを使おうと思います」運転手の言葉にうさ太は「ほうきで月まで飛んで行くんだね・・・ゆう太も一緒ならおらはこわくないよ」
強く言いました
「これからきにろさんにはほうきの操縦の腕を上げるために練習にはげんでもらいます」「わたしが操縦するんですか・・・」
「そうですよ うさ太さんはできませんからね」
「わたしで大丈夫でしょうか」「大丈夫ですよ きっと魔女ばあちゃんも力をかしてくれるでしょうから」
「そうだよ きにろさん大丈夫だよ 魔女ばあちゃんはいつだってきにろさんを助けてくれるよ」うさ太は革新があるようにきにろをはげましました
運転手はちょっと不思議そうにうさ太を見つめました
「おらはなにをすればいいの?」「うさ太さんはしっかりゆう太さんを育ててください・・・十日後くらいには脱出する予定ですから」
「わっそんなに早いの?」きにろはびっくりしました
うさ太もびっくりして顔で運転手を見つめていました
「きにろさんもうさ太さんも地球育ちのせいか小柄です ゆう太さんがあまり大きくならないうちのほうが負担が少ないうちがいいでしょう
今ではちょっと小さすぎますからね」
みんな言葉がなくなりそれぞれ考えこんでいました
「さあ・・・パンを食べてください」運転手がいいました
でもきにろもうさ太も手が止まったままでした