まだつづくきにろの昔ばなし

わたしは家にもどると「魔女ばあちゃん魔女ばあちゃん」と叫びました

「おやおやきにろどうしたんだい」魔女ばあちゃんはいつもトロリンとして感情を忘れてしまったようなわたしがバタバタしているので驚いたような顔をしました

「こんちゃんがねこんちゃんが見えるように魔法をかけてって」

「落ち着いて落ち着いて・・・ゆっくり最初から話してごらんよ」

わたしはいつもはすぐに忘れてしまうのにこんちゃんのことは最初から全部話すことできました

「なるほどなるほど」魔女ばあちゃんはわたしの話を聞くと水晶玉でこんちゃんのいる場所をうつしだしました

「・・・確かにぬいぐるみだねぇ」

「見えるようにできる魔法ってあるの?わたしにも使えるのかなぁ」

魔女ばあちゃんはしばらくおでこをコンコンしながらなにか考えていましたが「これはわたしの魔法ではなくおまえの力を使うといいのかもしれないね・・・どうやらこんちゃんもきっと・・・」

「えっ?わたしの力ってなんのこと?わたしはなんにもできないよ」

「大丈夫きっと大丈夫・・・だめなときはわたしが魔法を教えてやるからね」

魔女ばあちゃんはわたしの力はこんちゃんに触る必要があるからとこんちゃんを手元に引き寄せる魔法を教えてくれました

「ところで・・・わたしはそろそろ若返りの眠りにつこおうと思うんじゃよ」

「うんじゃあベットを使ってね」

「いやいやベットはそのままきにろが使っていいんだよ わたしはちゃんとほかに眠るところがあるからね 夕方きにろが起きたよきにはもうわたしは眠りにはいっていつからわたしがいなくても踊ろかないようにね なあにそんなに遠くにはいかないから困ったときには呼んでおくれ すぐにくるからね」

「うん・・・」わたしはちょっと不安でしたがいつものようにシチューを飲むとベットに横になり・・・眠ってしまいました

目がさめると・・・魔女ばあちゃんはいませんでした

シチューは魔法のしゃもじがグルグルかきまわしていてわたしがすぐに飲めるようになっていました

「そうだ・・・暗くなったらこんちゃんのところにいかなければ」

うまくこんちゃんが見えるようになるのかわたしの力というのがわからないのでととても不安でしたが待っているだろうと思うと行かないわけにもいきません

そして・・・わたしは魔法のほうきにのって(なんだかほうきがいつもより重く感じながら)こんちゃんのもとへとむかったのです


きにろの昔ばなし・・・つづきのつづき

わたしが空を飛んで遊んでいるあいだ魔女ばあちゃんは若返りの薬草をすりつぶし丸薬をつくりビンに詰めていました

若返りの眠りに必要とのことでした

魔女ばあちゃんはシチューに薬草を入れてなかったのでどんどん年をとっているようで心配でたまりませんでした

でも魔女ばあちゃんは笑って「大丈夫だよ わたしはどんなに年をとっても死なないよ ちゃんと若返る方法を知っているからね きにろを一人ぼっちにはしないよ」

一人ぼっちの意味はよくわからなかったけれどわたしは心が落ち着きました

 

そんなある日森のはずれの開発がすすんでスーパーや家が建ちはじめたほうをとんでいきました いろいろ不思議なものを見られるからです

魔女ばあちゃんは気を付けるんだよと何回も言うのですが・・・

「クククククククク」そんな感じが胸のあたりにしました

誰かが呼びかけているような感じでした

強く響くほうを目指してとんで行くと一軒の家の窓のようでした 家の中をそっとのぞきこむと「あっやっぱり魔女さんだ」

そんな声が胸に響いてきました

「わ・わ・たしは魔女じゃないんです」びっくりしてこたえました

「でも魔法で飛んでいるのでは・・・そんな感じがしますよ」「きみは誰なの?」

家の中には人間の男の子と大人とそのあいだにピンクのぬいぐるみのキツネが見えました

「ぼくはぬいぐるみのこんちゃんです」

「ぬいぐるみって話ができるの?」ますますびっくりしてしまいました

「ふつうはできないと思います でもぼくにもわからないけど心で思うと魔女さんには聞こえたようです」

「聞こえたというか感じたというほうがいいかもしれませんよ そこの人間には聞こえないのですか?」

「坊やとママにはわからないようですねぇ・・・もしわかったら怖がってしまうでしょうから・・・」

「わたしと話したいのですか?」「いえいえ・・・お願いがあるのです」

「お願いって・・・」

「わたしに坊やとママが見えるようにしてほしいのです 魔女さんなら魔法でできるのでは」

「魔法って言われても・・・わたしにできるかどうか・・」

わたしは困ってしまいました わたしは魔女ではないし魔法もあまり覚えてないし・・・

「ぼくが死んだら心をあげます・・・ぬいぐるみは死なないでしょうがこの中にいるぼくはいつか死ぬとおもいますから」

「そんな・・・心をもらっても・・・」

「だって魔女さんに願いを叶えてもらったら心をわたすんでしょ?」

なんのことやらさっぱり理解できないわたしは「今日は見えるようになる魔法を持ってないので明日持ってきますね」そういうと帰って魔女ばあちゃんに聞けばわかるだろうと思いました

「はいお願いしますね」ぬいぐるみのこんちゃんはうれしそうに言いました

わたしは不安をかかえ大急ぎで家にむかいました


きにろの昔ばなし・・・つづき

わたしは元気に家の中や森の中を歩き回れるようになったのですが魔女ばあちゃんは「どうしておまえは大きくならないのかねぇ やっぱり食べ物があわないのだろうか・・・薬草をいろいろ入れているから良いように思うんだけど長耳にはあわないのだろうかね・・・」と心配していました

「薬草・・・う~~むこれに問題があるのでは・・・あっしまった 若返りの薬草をいれていたよ・・・ああごめんよきにろ悪いことをしたしまったよ」

「若返りの薬草?」わたしにはわかりません

「これは魔女には大切な薬草なんだよ 魔女が長生きなのはこの薬草のおかげなんだよ だけどおまえのような小さな子には成長をおさえてしまうのかもしれない」そういうと魔女ばちゃんはシチューの鍋をひっくり返して中身を全部捨ててしまいまた新しくつきりなおしました

同じように黒いシチューなんですけどね 味も特にかわりません でもこれを飲みはじめるとわたしはようやく大きくなりはじめました

だけど魔女ばあちゃんはどんどん年をとっていったのです

そうまでしてわたしのことを考えてくれたんです

「魔女ばあちゃん・・・年をとっても大丈夫なの?」わたしは心配でした「なあに大丈夫さ 後で若返りの眠りにはいるからね・・・その前におまえに魔法と空の飛び方をおしえなくちゃいけないよ 少し大きくなったからもういいだろうからね」

魔女ばあちゃんは古いほうきを取り出し「これで空をとぶんだよ これは魔法のほうきだから操縦さえ覚えれば空を自由に飛べるんだよ まあ最近の魔女は使わないけどね わたしもずいぶん乗ってないよ きにろはこの家と夜の森の中にしかいけないものね あとは水晶玉を見ているだけだから これで空を飛べば楽しいだろうと思ってね」といいました

ほうきが飛ぶなんてと思いつつ魔女ばあちゃんのいうとおりほうきにまたがってみました

ほうきは静かに飛びました「ああすご~い」わたしはびっくりしました

「もちろん夜の空しかとんだらだめだよ これなら人間に見つかっても空に逃げればつかまることはないだろうし・・・ただあまり高く飛んではいけないよ ほうきがこわれてしまうからね また落ちたりしたら大変だからね」

わたしは家の中でしばらく練習してから空に飛び出しました

ああなんて楽しいんだろう・・・月が月が近づくよ・・・」

「きにろ~~だめだよそんなに高くまで行っては」魔女ばあちゃんの声が聞こえました

わたしはなんだかそのまま月に向かっていきたい気持ちでいっぱいにんりましたが「パキッ」というほうきの音にびっくりして家のほうに向きをかえもどりました

魔女ばあちゃんが心配そうな顔で迎えてくれました

「魔女ばあちゃんとても楽しいよ ありがとう」

「そうかいよかったね 上手に飛んでいたよ 高さだけは気を付けるんだよ」

魔法も少し教えてくれたんだけどわたしは覚えが悪いので魔女ばあちゃんは簡単なものにしてくれました

 


きにろの昔ばなし

わたしが目を開けると「おやおややっと気が付いたね」と声がしました 最初はなにを言っているのかわからなくて耳をピコピコ動かしました

痛みがツ~ンとしたけれど言葉はわかるようになりました

「怖がらなくてもいいよ わたしは魔女・・・ばあちゃんだよ」「魔女ばあちゃん?」

「お前の名前はなんていうのかい?」「な・ま・え・・?」

さっぱりわかりませんでした

「どこから来たのかはおぼえているかい?」「どこから?来た?」考えてけれど思い出せませんでした

「おやおや頭を打ったせいでなにもかも忘れてしまったのかい・・・まあそのほうが幸せかもしれないね なまじ覚えていて帰りたいと泣かれてもね~~わたしにはどうすることもできないし」

わたしは頭も痛かったしただぼんやりするばかりでした

「おまえは頭から血を流して森の中で倒れていたんだよ ああ昔見たことのある長耳族のこどもだってすぐにわかったよ」

「長耳族?」「うんうん長耳だよ・・・白い血を流して気をうしなっていたんだよ まだほんの小さなこどもだったからてっきり死んでいるかとおもったよ・・・いやいやよく生きていたもんだよ あんな高いところから落ちてきたというのに」

「高いところから?どこから?」

「いや・・・空から落ちてきたとしかわからないよ」

魔女ばあちゃんは小さなわたしを抱いて急いで家に帰り傷口に薬草をぬったそうです

果たしてう薬草が長耳に効くかどうかはわからなかったけれどほかに方法がなかったからね

いつまでも白い血は止まらないし傷口はぱっくりあいたままだし魔女ばあちゃんはあきらめかけていたらしい

でもやっと血が止まり傷口もふさがり・・・そして目をあけたんだって

わたしはこのへんの記憶もはっきりしていなかったんだけど・・・うさ太のおかげで思い出せたんだよ まるでうさ太が魔法をつかったみたいだね

魔女ばあちゃんは「おなかがすいtだろう¥・・・これをお飲み」と黒い飲み物を持ってきました「これは見た目が悪いけれど薬草がいっぱいはいっているからお前のからだにもきっといいだろうよ」

わたしはその見た目にちょっとびっくりしたけれどおなかもすいたいたので飲みました

どうってことのない味でした(このときからわたしはこの黒いシチューだけを飲んでいたんだけどね)

「おまえに名前がないのは困るから・・・黄色い・きいろ・きにろ・・・うんうんこれがいいね お前は今日からきにろだよ」「き・に・ろ・・・」

でもそれかれ何度もこの名前を忘れてしまい「きにろきにろ」と魔女ばあちゃんに呼ばれてもぼんやりしていて「アハハきにろはおまえの名前だよ」と笑われました

ほかのことも魔女ばあちゃんが教えてくれたのですがすぐに忘れてしまいました でも魔女ばあちゃんは根気よく何度でも繰り返し教えてくれました

「頭を強く打ったのだからしかたないことさ そのうりよくなってくるから大丈夫だよ」

やがて家の中を歩き回れるほど元気になりました

すると魔女ばあちゃんはわたしに黒い服を着せ長い帽子をかぶせ「これはとってはいけないよ おまえの姿を隠すものだからね 人間というのは姿かたちが違うというだけでひどいことをするんだよ さすがに火あぶりなんかはなくなったけどね それと明るいときは外に出てはいけないよ このへんは森の中だから人間はめったに来ないだろうけど・・・」

暗くなると魔女ばあちゃんはわたしを連れて森の中に行き薬草になるものを教えてくれました

忘れっぽいわたしに「薬草を覚えるのは悪いけれど毒になるものは本能的にわかるようだねぇ 長耳はきっとそんな力があるんだろうね」と言いました


魔女きにろの過去

「ところで魔女さんにききたいんだが」運転手が言いました

「魔女はやめてきにろって呼んでくれないかい?わたしの名前だよ」

「きにろさんは長耳族だからほんとの魔女ではないですよね でもここはどうみても魔女の家ですよね」

「ここは魔女ばあちゃんの家なんだよ」

「魔女ばあちゃん?」運転手はキョロキョロまわりを見回しました「今は魔女ばあちゃんはいないよ 若返りの眠りにはいってるからね」「しかし・・・魔女の気配がするからどこかで寝ているのではないですか?」「え?でもこの部屋しかないんだよ ベッドはわたしが使っているし」魔女もキョロキョロまわりを見回しました

壁に立てかけてある魔法のホウキがカタカタと小さくゆれました「フムフムなるほど」運転手はうなづき「きにろさんはどうして魔女の家で暮らすようになったんですか?」と聞きました

「ああ・・・それは・・・実はうさ太に頭の傷をなおしてもらったらぼんやりしていた昔のことがはっきり思い出すことができるようになったんだよ それまでは魔女ばあちゃんに魔法を教えてもらい始める前のことは思い出せなかったんだよ でもなぜ魔女ばあちゃんと暮らし始めてのかはわからないよ」

魔女きにろはむか~しむかしのことを話はじめました

きにろが魔女になった奇妙な話ですよ~~~