魔女の魔法

魔女は魔法の杖をクルクル回し・・・「*+*+$#*+」

なにやら呪文のようなものを唱えました

おやおやなにか見えてきましたよ

「かあちゃん!!」うさ太が叫びとびつこうとしました

魔女はあわててうさ太を止めました「これはほんとのかあちゃんじゃないんだよ かあちゃんのカゲだからさわることはできないんだよ」

「えっ?カゲってなに?」「わたしにはほんとのかあちゃんを月から呼び戻すことはできないからね これはかあちゃんのかたちをしているだけだよ それにこれはうさ太にしか見えないんだよ だからかあちゃんに話しかけるときは心の声でなきゃだめなんだよ 心の声でかあちゃんと言ってごらん」

うさ太は心で・・・かあちゃん!!・・・と言うとかあちゃんのカゲはうさ太のほうを向き・・・なあに?・・・と言うように笑いかけました

「残念だけどかあちゃんは言葉もでないんだよ」魔女は力のない自分を恥じるかのようにうつむきました

「魔女さんありがとう おらにはかあちゃんだよ 本物じゃないけどおらうれしいよ」うさ太は涙をながしながら・・・かあちゃんかあちゃん・・・と心の声で呼びつづけました

魔女は「わたしはもう一仕事しに行くよ うさ太ももうおやすみ」というと窓からほうきに乗って出て行きました

ガタガタギシギシとおんぼろほうきは音をたてながら魔女を乗せとんでいきました

うさ太はふとんを敷くとかあちゃんのカゲに・・・もう寝ようね・・・おやすみかあちゃん・・・と言うとかあちゃんはふとんに横になりうさ太のほうに顔を向け・・・おやすみうさ太・・と言ってるようにうなずきました

うさ太は触れないかあちゃんだけどかあちゃんの手のあるところに自分の手をおきかあちゃんを見つめつづけていましたがやがて眠りにつきました

 

魔女が仕事がおわってうさ太の部屋をのぞいたときはうさ太はぐっすり眠っていました

少し涙が目元にたまっていました

「やれやれ・・・かわいそうに・・・」消えそうな月を見上げ「月にt連れていってやれたらいいんだけどなあ」とつぶやきました


うさ太と魔女

魔女は時々うさ太の家のそばを通って部屋をのぞくことがあった

この日もそうしょうとうさ太の家のほうに向かった

そのとき魔女の耳にうさ太の泣き叫ぶ声が聞こえてきた「かあちゃ~んかあちゃ~~~ん」魔女はスピードをあげた おんぼろなほうきはギシギシと悲鳴をあげ魔女もこんなスピードになれていなかったので落ちそうになるのを必死でこらえた

うさ太の家の窓に近づき中をのぞくとうさ太はまくらをだきしめワアワア泣いていた「かあちゃんかあちゃん」いくら呼んでもかあちゃんの姿は見えなかった

魔女はそっと家の中にはいりうさ太のそばに近づくとその気配に気が付いてうさ太が顔をあげ「かあちゃん?」でもそこにいたのが魔女だとわかると「魔女さんかあちゃんが行っちゃったよ~」とまた泣き始めた

「かあちゃんが行っちゃった?どこに?」「お月様に」

魔女は空を見上げた 月は煌々と光を放ちまるでうさ太のところにむけてひかっているかのようだった

「魔女さんおらをお月様に連れて行ってよ そのほうきはお空を飛べるんでしょ?」「飛べるといっても月まではとても無理だよ」うさ太はまた泣き始めた

「・・・やれやれ・・・奇妙なこともあるもんだ まさかかあちゃんはかぐや姫・・・なんてことはないよな まあおかしな二人とは思っていたけど」

魔女はうさ太にかあちゃんが行ってしまった経緯を詳しく聞いてみた

うさ太は泣きながらも様子を話した

「そうか・・・うさ太はまだ月には行けないということはいつかうさ太も月に行ってしまうということだね・・・(ありゃ~)」「いやだよ~今すぐお月様に行きたいよ~エ~ンエ~ン」

「そういわれてもね~わたしにはどうすることもできないし・・・そうだ!!いいことがあるよ」

うさ太は顔をあげ期待に満ちた顔で魔女を見つめた


魔女は・・・

魔女は最近のかあちゃんの様子が気になってしかたありませんでした

それにかあちゃんが時々フワフワとゆれることも不思議に思っていました

水晶玉から目がはなせないしうっかり居眠りもできないのです

 

あの・・・問題の日も水晶玉をのぞいていました

楽しそうに買い物をしたり食事をする姿を見たりおいしそうなカレーを仲良く食べる様子を見て・・・ああ、なにも心配することはないんだな よかった、よかった・・・

魔女は暗くなりはじめた空にほうきにのって飛び立ちました

魔女のお仕事ですね

だからそのあとに起きた悲しい出来事をしらなかったのです

まあたとえそれを目撃したとしてもどうすることもできなかったのですけどね


別れ・・・

うさ太はゆっくりだったけど確実にお仕事を覚えていきました
かあちゃんは今までのようにうさ太と公園に行くことを続けそれはかあちゃんにとって幸せでありながらも毎朝二人分のお仕事を確認するまではドキドキ不安でした
うさ太はなにも知らずかちゃんとお仕事ができるのがうれしくて張り切っていました

その日・・・別れの日はやってきたのです 朝ドアの外にはお仕事の箱は一つしかなかったのです
かあちゃんはそれを見ると目の前が真っ暗になったようにふらふらと倒れそうになりました
ああ今晩はうさ太とのお別れの日・・・かあちゃんの一番恐れていた日です
でも逃れられないことです かあちゃんは覚悟を決めました

いつものようにおもちを食べミルクを飲みうさ太のつくった朝食を食べ掃除洗濯をすませると「うさ太今日はバスに乗ってお買い物にいこうね」といいました
うさ太は大喜びです
バスでお買い物に行くとドーナツを買っておやつにするからです 大好きなドーナツです
かあちゃんはうさ太にかあちゃんと同じ白い長靴と白いエプロンを買いました うさ太は大喜びで「わ~いかあちゃんとおそろいだよ~」ピョンピョンはねました
それから「お昼も食べていこうね」かあちゃんは「何を食べようかしらね」とうさ太に聞きました
「かあちゃんは何がたべたいの?」「そうね~何がいいかしらね~」かあちゃんはいつもならうさ太の好きなものにするのに今日はちょっと違っていました
うさ太はかあちゃんを見つめました
「かあちゃんはエビフライを食べてみたいけど・・・」
「わ~いエビフライおらは大好きだよ」
「あらら・・・じゃそうしましょうね」かあちゃんはうれしそうにニコニコしました うさ太はかあちゃんの笑顔を見てうれしくなりました だって最近はかあちゃんはちょっと悲しそうに見えていたからです
エビフライを食べドーナツを買って家にもどるとうさ太はお仕事をしようとして「アレレ・・・お仕事の箱が一個しかないよ」と言うとかあちゃんは悲しい顔で「今日からうさ太一人でお仕事をしなければいけないのよ」答えました
「そうなのか~~よーしおらがんばってお仕事するからね、かあちゃん安心してよ」
うさ太はお仕事を張り切って始めました
三時にはかあちゃんがドーナツを用意してくれ夕飯はカレーライスをつくってくれました
「おらかあちゃんのカレーが大好きだよ おらも同じようにつくるんだけど・・・なんかちょっとちがうんだよね」夕飯が終わるとまたお仕事をしようと・・・
「かあちゃん!!」うさ太は叫びました
かあちゃんの姿がユラユラしているのです
「うさ太・・・ごめんね、ごめんね」
「どうしたのかあちゃん なんかへんだよ」
かあちゃんはゆれるからだを必死に止めながら「うさ太ほんとにごめんなさい、かあちゃんはお月様に帰らなければならないの」
「エッお月様に・・・おらも行くよ行くよ」
「うさ太はまだ行けないのよ」
「え~~~・・・かあちゃんいつ帰ってくるの?明日?明後日?」
「もう帰ってこれないの・・・でもお月様でうさ太を待ってるからね必ずまた合えるから」
「やだよーやだよーおらも一緒にいくよ~~おらひとりぼっちになっちゃうもんやだよー」
うさ太は叫びました
でもかあちゃんはもうユラユラを止められなくてフワフワと窓から煙のように流れて行きました
空には真ん丸な・・・いつもより真ん丸な月が輝いていました
「かあちゃん!!かあちゃ~~~んエーンエーンかあちゃ~~~~~ん」うさ太は泣き叫びました
かあちゃんは白い煙になりユラユラとやがたスピードをあげ月にむかって行きました
やがて月に白い雲がかかり月は雲を飲み込むように少しゆれました
月はまた煌々と光輝きました
うさ太は泣き続けました「かあちゃんかあちゃん」呼んでも呼んでももうやさしいかあちゃんの声は聞こえませんでした
うさ太は…ひとりぼっちになってしまったのです
可愛そうにひとりぼっちに・・・


別れのはじまり

その時は突然やってきた・・・かあちゃんはまだもう少し先のことだろうと思っていました
朝いつものようにお仕事の箱とおもちの箱を部屋にいれようとドアを開けるとお仕事の箱が二つになっていました
「ああ・・・ああ・・・そんな・・・」かあちゃんは泣きそうになりました

テーブルのそばにふたつの箱をおきおもちの箱をいつものようにテーブルにのせ・・・朝食の支度をする元気もなく・・・うさ太が起きてきてぼんやりしているかあちゃんを見て「どうしたの?かあちゃん・・・どこか具合が悪いの?」そしてお仕事の箱が二つあるのをみつけると「アレレ?お仕事がふえたの?それで困ってるの?おらおうちのこと全部してあげるよ」

かあちゃんは少し笑って「ありがと、うさ太 違うのよ これはうさ太の分なのよ」
「えっ?おらのお仕事?」「そうよ・・・うさ太がなんでもできるようになったからいよいよ封筒はりを覚えるときがきたのよ」
「わぁ~~そうなんだ、うれしいな~~でもかあちゃんはなんだか悲しそうだよ」うさ太はかあちゃんの様子が気になってしかたないのです
「ううん、かあちゃんはうさ太がこのあいだまで赤ちゃんだったのにこんなに大きくなって封筒はりができる年になったのでちょっとさみしかっただけよ」
「おらが大きくなったらどうしてさみしいの?」
「うさ太も覚えているでしょ?赤ちゃんでかあちゃんのところにきたことを・・・可愛くて可愛くてかあちゃんはいつまでもだっこしていたかったのよ」
「うん覚えてるよ、おらもかあちゃんにだっこされてすごく幸せだったよ、今だってだっこしていいんだよ、おらかあちゃんが大好きだから」
うさ太の言葉にかあちゃんは笑い出し「そうねいつだってだっこすればいいのよね、かあちゃんにとってうさ太は可愛いあかちゃんだもの」、さあさあ朝ごはんをつくりましょ!!」かあちゃんは自分に気合をいれるように元気よくたちあがりました

その日からもう青いバケツと黄色いシャベルを持って公園に遊びにいくことは少なくなりました
少しずつかあちゃんはうさ太に封筒はりを教えていきました「ゆっくりでいいのよ」「うん・・・」
うさ太は息をとめるように真剣に覚えよう努力しました
かあちゃんのお仕事を見ていたとはいえ実際にやるとそれは難しいものでした
何枚も失敗し何日もかかり・・・

かあちゃんは耳をピクピク動かして「うさ太、今日はパン屋さんがくるから公園にいきましょ」と誘いました
「うん」うさ太はうれしそうにピョンピョンはね母ちゃんと手をつなぎでかけるのでした
パン屋さんはうさ太を見るとちょっと目をみはりましたがなにもいいませんでした
パン屋さんにはうさ太が大きくなったのがわかっていたのでした「もうじきなんだな・・・」二人の後ろ姿をみながら首をふりました