魔女狩りはひどいものでした
魔女と噂がたつだけでふつうの人まで火あぶりにされたり・・・
みんな怖がって家に閉じこもって変な噂が流れないようにと小さくなっていました
母を助けてくれた魔女さんのひとりもとうとうつかまってしまい火あぶりにされてしまったのです
母は泣きながら夜中にその場所まで出かけて行きました・・・骨を拾ってあげようと思ったのです
だけどそこには骨がありませんでした かわりに雪のように真っ白な灰が残っていました
「これが魔女さんの骨なんでしょうね」持っていった袋に白い灰をいれると袋の口をしっかりしばり
森の奥の魔女さんのところに届けてやろうと夜道を走りました(昼間は危険ですからね)
ああ・・・そこにはもう魔女さんの家はありませんでした もちろん魔女さんたちもいませんでした
「きっと無事に逃げたんでしょう ここはもう危険ですものね」
家にもどると母は袋の口をしっかり結び棚にのせました「魔女さんきっといつか会えますよね そのときにこれをお渡ししますからね」
それからの母はまた大変でした お手伝いの仕事もないので食料が手にはいらず木の実や野菜くずなどを食べ
魔女シチューの残りをわたしのためにのこしてくれたのです
しかしそれもやがて・・・うすめては増やしていたのですが・・・ただのお湯にんってしまいわたしのおなかは満たされず
また泣くちからもなくぐったりとしてしまいました
母ももう力なくわたしを見つめているだけでした
・・・カサkサ・・・部屋の中でなにか音がしました
・・・サラサラサラ・・・流れるような音になりました
母はきょろきょろとみまわして「あっ!!びっくりしてあわててかけよりました
あの魔女さんの灰を入れた袋の口がほどけ中から灰が流れ落ちていたからです
だけどかけよったときには間に合わず灰は流れ落ちてしまっていました
下を見てまたびっくり・・・お湯をいれたsチュー鍋の中に落ちていたのです
まるで魔女シチューのように白くてトロリとしていました
「魔女さん・・・これは・・・」母は手をあわせました そしてわたしに飲ませたのです
母は一滴も飲みませんでした 木の実や野菜くずを食べながらわたしだけに飲ませたのです
半分ほど飲んだ頃にはわたしはヨチヨチと歩きはじめました
残り少なくなったころにはしっかりとした足取りで母と森にまでいけるようになったのです
とても成長が早く母は「魔女さんの力でしょうね」と言いました
母と森の奥の魔女さんの家のあったところに行くとわたしは「ヤチョウ ヤチョウ」と草を取り
母の持っている籠にいれました「まあこれは魔女さんの野草だわ ぼうやにはみわけることができるのね」
それからは魔女シチューをつくることができましたが白いミルク味の魔女シチューにはなりませんでした
でもおなかを満たすには充分でした
母はやがて具合の悪い日が多くなりわたし一人で森に行くことが多くなりました
でもそのころにはわたしはしっかり歩くようになっていたし判断力もあり食べられる木の実や果物も
とってくることができるようになっていました
どんなに母に魔女シチューを飲ませても大好きな果物を食べさせてもどんどん弱っていきました
ベッドにねたきりになったある日母はわたしを枕元に呼びました
「ぼうや・・・おかあさんはもうお空にいかなくてはならないの・・・ごめんね」
「おかあさん そんなこと言わないで もっと薬草をとってくるから」
「ぼうや 人はいつか死ぬものなのよ おかあさんはあなたととても幸せにくらせてうれしかったわ」
「ひとりぼっちになっちゃうよ」
「そんなことはないわ あなたには魔女さんがついていてくれるのよ きっと守ってくれるからね」
そしてわたしが魔女さんの白い灰のおかげで生きることができたのだと教えてくれました
「なにか不思議なことが起きることもあるでしょうが恐れなくてもいいのよ」
母は旅立って行きました 幸せそうに微笑んで・・・
わたしは母を抱き上げました 枯れ枝のように細く軽い母でした
そして森の奥の母の大好きな魔女さんの家のあったところにお墓をつくりました
「おかあさん わたしは魔女さんを捜しに旅にでます・・・きっともどってきますからね・・・」
まわりにはえていた薬草がゾワゾワと母のお墓のまわりをかこみました「薬草さんお願いしますね」
家にもどると魔女さんの灰がはいっていた袋にお鍋と小さな器としゃもじを入れました
「さあ行こう」・・・(わたしがついていますよ)
心の中に声がしました